ガブリエル・ガルシア・マルケス著 「百年の孤独」を読んだ感想 

 

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マコンドの地の100年の時間な流れを描いた作品。実際のコロンビアの19世紀後半から20世紀前半の歴史を元に書かれている。コロンビアの近代化の過程の一コマを切り取ったものでもある。自由党と保守党の紛争。バナナプランテーションの労働闘争。教科書に載らない起き出来事の多くは忘れ去られるか捻じ曲げられ伝わる。人々の記憶は脆い。男たちは戦争や闘争に身を投じたり、錬金術や解読できない文書に取り憑かれたりして家のことは女たちが取り仕切っている。必死に働かないと自ずと全てが熱帯の密林に帰っていってしまう。第一世代のホセ・アルカディオ・ブレンディオとウルスラが現役の頃はジプシーの民、メルアキデスが持ち込んだ文明の利器や錬金術にはまだ牧歌的な雰囲気が感じられる。アウレリャノ・ブレンディオ大佐とアルカディオの頃になると保守党と自由党の対立から紛争をが始まった。紛争を始めたアウレリャノ・ブレンディオ大佐は自由や尊厳のための戦いではなく、自尊心のために戦っていた。その次の世代になるとホセ・アルカディオ・セグンドは闘鶏によって、アウレリャノ・セグンドは情婦のペトラ・コステの生命力によって家畜が病的なまでに繁殖し財産をなし、放蕩の限りを尽くした。それとほぼ同時にマコンドにはアメリカ人によってバナナ畑が作られ、街は好景気に沸いた。最後の世代のバビロニア・アウレリャノはメルキアデスが残していった解読不可能の暗号を読み解く。それは一族に起こる出来事を記した予言の書だった。予言の書の最後の文を解読すると同時にマコンドはこの世から消え去った。何度も繰り返されつけられるアウレリャノとアルカディオという名前。同じ名前がついた子には同じ性格、運命が待ち構えている。男たちが引き起こす出来事は戦争によって指揮官になるといばりちらし、財産が手に入ると酒や女に溺れてしまう。

面白い小説を読んでいると文章の意味や理解をよりも先に小説の世界に入り込んでしまって、勝手目が文字を追ってしまうことがる。次へ次へという感情の方が先立ってページを捲るという体験を久しぶりにした。この本から孤独ではなく騒々しいくらいの生命力も感じられた。しかし、登場人物がそれぞれの孤独を感じていた。その孤独は特別なものでなく普遍的なもののように感じた。魔法の絨毯が出てきたり、幽霊が出てきたりするがこの物語は歴史よりも小さな物語で一人一人の人生を、孤独と愛を描いたからこそ世界的に読まれている作品になったのだろう。

いくら言葉を尽くしてもこの本感想は言葉にできない。何十年後かに再読したら違った読み方ができるのだろう。