「ホドロフスキーのDUNE」を見て

こんな人にオススメ 人生に悩んでいる人

          SFが好きな人

監督フランク・パヴィッチ 2014年公開

こんな映画

「エル・トポ」や「ホーリーマウンテン」などのアートムービーで1970年代注目されていたホドロフスキーが世界最高の映画を撮ろうと世界最高峰のスタッフを集める。俳優にはサルバドール・ダリミック・ジャガー、オーサン・ウェルズなど歴史的の人物ばかり。絵コンテにはバンド・デシネ作家のメビウス。美術、デザインにはエイリアンのデザインをしたギーガー。音楽はピンク・フロイドを起用している。あの手この手を使って各界のスターを口説き落としていく。様々な困難を超えて企画者を完成させ、ハリウッドの映画制作会社にプレゼンをする。しかし、企画の完成度は認められるものの企画の壮大さに会社がついていけず制作に手をあげるものはいなかった。予算1500万ドル、上映時間12時間という超大作である。結局この企画は頓挫してしまいホドロフスキーは深いショックを受ける。制作することなく終わってしまった一本の映画を巡るドキュメンタリー映画である。

 

未完の大作「DUNE」の影響力

映画は作られなかったがホドロフスキーが「DUNE」の制作を通じてスタッフの意識を変革したことによってのちの数々の名作が作られた。「DUNE」完成しなかったが数々の作品のクリエイティブのタネを蒔いたのだ。絵コンテを担当していたメビウスの本業であるバンド・デシネにはもちろん、スターウォーズブレードランナーマトリックスなど影響力は凄まじい。現在のSF的視覚表現は「DUNE」によって土台が作られたといっても過言ではない。今まで見たことがある作品のイメージは、プレゼンのためハリウッド中に配った企画書の中から生まれた。「DUNE」の中で主人公が肉体は殺されても意識となり人類の中で生き続けたように、のちの世界中の文化の中で生き続けているのだ。

ホドロフスキー監督の魅力

狂気的にも見える創造への情熱が凄まじい。彼はこの映画を見た人が意識が変革するような、世界をかえるような映画を求めていた。「世界を照らすものは、自分の身を焼かなければならない。」と語っていた。監督が身を削って作った完璧な企画が資金面で制作が中止されたら普通だったら恨み節で終わるかもしれない。しかしホドロフスキーは違う。「失敗しても構わない。それも一つの選択だ。」と語る。地位や名声を求めるのでなく、人類の営みの一部として自分の創作を考えている。クリエティブの考えているスケールの大きさに驚かされる。彼にとってアートとは1、光と陰、理由と結果などの物事の両義性を表現するもの。2、人生、人間は素晴らしいと人々に伝えるもの。本当のアートはその時は理解されなかったが30年、40年をへてやっと多くの人に伝わると語っていた。偉大なアーティストだが謙虚で自分のエゴをすて自分の信じる道を歩いている。純粋に真摯に作品を作っているアーティストは世界を見てもそういないだろう。彼の作品を知ってからまだ2ヶ月ほどだがクリエイターを目指す身としては彼の人類、創作に対する思いは今後の人生の指針にしたい。